シールドトンネル

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シールドトンネルは、シールド工法によって掘削されたトンネルである。「シールド」と呼ばれる筒(ないし函)で切羽(きりは)後方のトンネル壁面を一時的に支え、切羽を掘削しながら逐次シールドを前進させるとともに、シールドの後方に壁面を構築する。

現代ではもっぱら、高度に機械化されたシールドマシンを使い、壁面は分割されたブロック(「セグメント」)を組み上げて構築する。セグメントは工場大量生産できるので、コスト面に優れる。

軟弱地盤でも掘り進むことができる、というのが最大の特徴で、水底トンネルの掘削に活躍した。土地利用の深度化に伴い、最近の地下鉄道路(主に都市内)、共同溝下水道地下水路、地下河川などのトンネル工事では、シールドトンネルが多く採用されている。

歴史[編集]

シールド工法による最初の成功例となったトンネルは、マーク・イザムバード・ブルネルによって開発され、彼とトマス・コクランによって1818年1月に特許が取得された。ブルネルと彼の息子(イザムバード・キングダム・ブルネル)は、テムズトンネルの掘削にそのシールド工法を採用し、1825年に掘削を開始した(ただし、開通は1843年まで待たなくてはならなかった)。ブルネルがシールド工法のアイデアを思いついたのは、造船所で働いているときに見たフナクイムシ(船食い虫)に起源があるといわれている。フナクイムシは水中の木質に穴を開けてそこに住むため、木造船の天敵であり研究対象となっていた。水中の木材に単に穴を開けただけでは、すぐに周囲の木材が膨張し穴が狭まってしまうが、フナクイムシは石灰質を壁面にすりつけて一種の「トンネル」を作っているのである。このブルネルのシールドは、ロンドン・ランバースの Maudslay, Sons & Field(排水スチームポンプも建造)により供給された。

1870年、ブルネルが考案したオリジナルのシールドの形状は、ロンドン中央を流れるテムズ川の下へのタワー地下道 (Tower Subway) の建設中に、ピーター・バーロウにより大幅に改善された。バーロウが行った最も決定的な技術革新は、ブルネルが考案した長方形断面のシールドを、円形断面とした点である。これにより一挙に、建設作業が単純になるばかりか、周囲の土砂の重量をうまく支持できるようになった。

バーロウタイプのシールドの形状は、1884年には、シティ・アンド・サウス・ロンドン鉄道(現在のロンドン地下鉄ノーザン線の一部区間)の建設に際し、ジェームズ・グレートヘッドによって大型化され改善された。今日に至るまで、たいていのシールドトンネルはグレートヘッドタイプのシールド工法に何らかの起源を持っている。

日本では、1917年に羽越本線折渡トンネルの一部区間で単線シールドトンネルが初めて採用された。1936年には世界初の海底鉄道トンネルである関門鉄道トンネルでも採用され、1964年には大阪市営地下鉄中央線で、日本初の複線シールドトンネルが採用された。

シールド工法[編集]

シールドトンネルは現代ではシールドマシンを使用して掘削され、その施工法はシールド工法と呼ばれる。一般的なシールド工法の手順は以下の通りである。

シールドマシン[編集]

シールドマシン を参照

設置[編集]

シールドマシンを地下へ運び発進させるために開削工法によって立坑(縦穴)が掘削・構築され、坑内に発進設備が収められ、基地が作られる。シールドマシンは鉄鋼メーカーなどの工場で製作されるが、よほど小口径ではない限り、工事現場に搬入される前にいったん分割され、運搬される。工事現場の発進基地に運ばれたシールドマシンは、大型のクレーンによって立坑下に下ろされ、再度、組み立てられる。

この立坑は、トンネル完成後は鉄道では駅、道路では換気塔下水道では人孔(マンホール)などに転用されることが多い。

シールドマシンは一般的には円筒形である。マシン本体の外周の甲殻は、マシン内部でトンネルが構築されるまでの間、地山からの土圧・地下水圧に耐える役割を果たす。

掘削[編集]

マシン先端の切羽に接する部分はカッターヘッドという回転する面板となっており、ここにおろし金のような細かい刃(カッタービットあるいはビットと呼ばれる)やローラーカッターが円周状・放射状に多く配置されている。ビットは常に地山と接し軟弱土 - 硬質土を、ローラーカッターは玉石、または岩盤を切削するという最も過酷な環境にあるため、超硬合金や焼結タングステンカーバイドなどの強靭な素材が用いられる。また、カッターヘッドの形によってトンネルの形も変わってくる。その形は四角形から円を並べたものなど様々である。

シールドマシンの後部にはジャッキが円周状に配置されており、このジャッキの推進力でマシン全体を前進させ、先端部を切羽の地盤に押し付けながらカッターヘッドを回転させて地山を掘削し前進する。また、シールドマシンの形によってトンネルの形も変わってくる。

泥土圧式シールドで土砂圧送方式によって土砂を搬出する場合、掘削された土砂(ズリ)は切羽で塑性流動化してパイプで地上まで輸送される。またズリ鋼車方式によって土砂を搬出する場合、シールドマシンのスクリューからベルトコンベアで後方台車の後部まで土砂を輸送して鋼車に載せる。土砂を載せた鋼車はトロッコによって立坑下部まで移動し、鋼車部のみをクレーンによって立坑上部(地上部)吊り上げる。吊り上げられた鋼車内の土砂は地上ヤードまたは立坑内に設置されたピットや土砂処理施設で処理・脱水されてダンプトラックを用いて土捨て場や産業廃棄物処理場へ搬出される。

セグメント組立[編集]

マシン内部ではあらかじめ工場製作されたセグメント(円弧状のブロックで、鉄筋コンクリート製、鋼製、鋳鉄製など)を機械により組みあげ、トンネル本体がトンネル断面の1周分(1リング)ずつ構築される。

セグメントは工場からトレーラーで現場に搬入され、立坑から地下のシールドマシン内部までクレーンとトロッコで運び込まれる。

セグメントが1リング分配置されると、その部分のトンネル本体は完成する。鉄道・道路トンネルでは、1リングは5 - 10個程度のセグメントで構成され、セグメントの幅(トンネル縦断方向の長さ)は0.3 - 1.8m程度である。これらはトンネルの径や形状、用途、使用するセグメント等によって異なる。

軌道敷設、道路床板設置、防水・防火などの目的のために、完成したトンネルのセグメント内側にさらにコンクリートなどを巻き立てる(二次覆工)場合がある。このためセグメントは一次覆工とも呼ばれる。

前進[編集]

セグメントが1リング分組みあがると、組みあがった部分(セグメントリング)にジャッキの反力をとってシールドマシンを前進させ、次の掘削・推進を行う。上記の2 - 3の工程を繰り返しながらトンネルを1リングごとに組み上げる。

廃棄[編集]

トンネル完成後のシールドマシンは、その場で解体して部品として回収するか、脇道を掘り地中に埋没・廃棄されることが多い。外殻をトンネルの構造物の一部として残す例もある(壁面を観察するとわかることがある)。

まれに、別のトンネルのために再利用されることもある。

再利用されない場合、保存や展示がされるケースもあり、京阪中之島線中之島駅には、シールドマシンのカッター部分(一部)がモニュメントとしてトンネル終端に保存されている。海ほたるパーキングエリアには、東京湾海底トンネルの掘削につかわれた巨大なカッターを加工した巨大モニュメントがある。名古屋市交通局日進工場などには、シールドマシンが保存展示されている。

種類[編集]

  • 泥水加圧式シールドマシン
  • 泥土圧式シールドマシン(土圧バランス式、加泥式、土圧加水式など)

圧気工法[編集]

(圧気工法自体はシールドの工事に限られない)近年では技術の進歩により、シールド工事では切羽面のみに加圧する手法がとられるが、過去、特に切羽がむき出しの場合は坑内の気圧を上げる圧気工法がシールド工事で使われることも多かった。これは作業員の出入りに手間を要し、特に出る際に減圧症の危険があった。また、御徒町トンネルの陥没事故のように、浅い場所で土砂を吹き飛ばしてしまう事故もあった。他にもトンネル外に対して、土中の酸欠空気が近隣の地下室に吹き出す、圧力に耐えるようにするために土壌に注入する薬品による汚染、などの危険があったため解決に向けた努力が図られ、近年のシールド工事では圧気工法は使われなくなっている。

セグメントの種類[編集]

  • 鉄筋コンクリート (RC) セグメント(プレキャストセグメント
  • 鋼製セグメント(鋼材を製缶加工して製作)
  • 鋳鉄(ダクタイル)セグメント
  • 合成セグメント(鋼製セグメントに鉄筋を配置しコンクリートを打設したもの)

採用例[編集]

鉄道トンネル[編集]

鉄道駅[編集]

道路トンネル[編集]

水路[編集]

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関連項目[編集]